PVD(セラミックコーティング)
ここでは、真空めっきの中でも「PVD」といわれる物理的蒸着法の「イオンプレーティング」と「スパッタリング」について説明します。 PVDは、電気めっきと違いプラズマ空間で処理することから、金属以外のガラスやプラスチックの品物にも成膜することができます。

イオンプレーティングの原理
  1. 品物を治具にセットし、機械内部を高真空(10-3 Pa〜10-5 Pa)にして、電子ビームを蒸着材(Tiなど)に照射し蒸発させます。高真空にする理由は、そうすることで固体の蒸発温度が下がり蒸発しやすくなるからです。さらに高真空・高温になることで電子の運動が活発化されます。
  2. 蒸発源に電圧をかけることで蒸発粒子をイオン化します。活発に運動する電子(熱電子)に正の電圧をかけると、電子が電極(イオン化電極)に向かって進むのですが、この間に蒸発粒子と衝突し蒸発粒子がイオン化されます(M→M++e)。これを繰り返します。
  3. +イオンとなった蒸発粒子は、品物に向かって進みます。品物に到達した蒸発粒子は急速に冷却されて固化されます(蒸着と似ていますが、蒸着と違う点として、蒸発粒子がイオン化され、高速で品物に衝突し固体化することで品物との密着力が強くなるところがあります。但し、あまり高速にすると粒子は直線的に衝突するため、品物全体への均一な膜の形成が難しくなります)。
  4. 2.と3.の間で反応性ガス(窒素やアセチレン)を導入することによりガスの原子を巻き込んで膜が形成されるため、化合物の皮膜になります(色がでてくる)。ガスの導入量により色の濃度が設定されます。

スパッタリングの原理
  1. 品物を治具にセットし、機械内部を高真空(10-3 Pa〜10-5 Pa)にして、ターゲット(図ではTiを使っていますが、他にCrやAuなども使用します)に数百〜数千Vの電圧をかけます。この時に機械にAr(アルゴン)ガスを導入すると、ガスが帯電されイオン化され、プラズマが発生します。
  2. ガスが帯電されることにより発生したイオンは高速でターゲットに衝突し、ターゲットを構成する原子を叩き出します(イメージとしては、砂利の中に小石を投げつけると、砂利が跳ね飛ばされる感じです)。
  3. 叩き出された原子はプラズマ中で他の電子等と衝突しイオン化されます。また、叩き出された原子は高速でプラズマ中にある品物に衝突・堆積し膜を形成します。さらに、反応性ガスを導入すれば化合物皮膜にもなります。
  4. イオンプレーティングと違うところとしては、ターゲットを溶解させないため、蒸発温度の違う合金や非常に高沸点のものもターゲットとして使用できます。



加工例